「養鶏」。それは、尊い "いのち” をつないでいくこと。

耳納連山の新緑の中を筑後川の清らかな水が駆ける、初夏の福岡県うきは市。全国有数の「名水の地」としても知られるこの場所で、飼育環境・餌・水などすべてにおいて妥協せず、平飼い養鶏を行う「山もり養鶏場」。最高の自然環境で健やかに育てられた鶏たちの産む「山もりたまご」は、生命力に溢れ、自然そのままの豊かな風味が人気を博す。



"いのち"と向き合う中で、高まった想い。

以前は、福祉の仕事に従事していた塚本さん。養鶏との出会いは、兄妹に導かれたご縁であった。

塚本さん:「妹が農業をしていたこともあり、もともと農業に興味はあったのですが、妹のつながりで山もり養鶏場で求人があることを知り応募しました。初めは、研修からでしたが、『自然豊かな土地で、こだわり抜いた美味しいたまごを作りたい。安心・安全なたまごを届けたい。』という想いが自然に芽生えていた気がします。」

養鶏に携わり、"いのち"と向き合う中で、想いは高まり、いわゆる安定した仕事を手離し、うきはへの移住を決意した。

塚本さん:「鶏の世話から販売まで、すべてに自己決定権を持つようになり、働き方はサラリーマン時代から一変しましたね。養鶏を通して、お客様との直接の対話も多く、自分自身が大切に育てたもので喜んでいただけることが何よりの魅力です。」



"続ける"大変さ。

山もり養鶏場で採用する「平飼い方式」は、現在は全国でも約5%が行う程度。広くて開放的な鶏舎では、鶏たちは太陽の光をいっぱいに浴びながら、のびのびと過ごしていた。一方、やはりその分、生産者の労力は計り知れない。

塚本さん:「日々の作業は決まっていて単調ですが、"続けていくこと"が一番大変かもしれません。また、飼育密度が高くなると鶏にストレスがかかってしまいます。その結果、他の鶏を突いたりする悪影響も出てくるので一定の飼育密度が保たれるようにしています。集団で鶏を飼うこと自体が"自然"ではないので。鶏の社会でも序列があり、後ろから追い回して突いたりするので、なるべくそういう気持ち自体を起こさせないようにしたり、とにかくストレスを減らしてあげることを心がけています。」

また、「平飼い」は、衛生的な環境をつくり出し、鶏舎内の臭いを解消するとともに、鶏たちの健康を守ることができる飼育方法だと話す。発酵した餌を与えているため鶏の腸内環境が良くなり、結果として糞の匂いも発生しにくい効果があるという。

塚本さん:「鳥インフルエンザのような感染症は、主に『ゲージ飼い』での発生が多いです。平飼い養鶏も感染リスクが全くないわけではありませんが、鶏の個体が健康で免疫力が高いので、発症の例も聞きません。広い砂場を用意してあげて、そこで『砂浴び』と言って、皮膚や羽毛についたダニや寄生虫、汚れを落とせるようにしています。」

山もり養鶏場で力強く生き生きと暮らす鶏たちが生み出す"山もりたまご"は、どこか懐かしさを感じさせるレモン色の黄身と、こんもりとした弾力のある白身がキラキラと輝く。



自家配合飼料と四季折々の旬野菜。

山もり養鶏場では、その日の鶏たちの体調や季節に合わせて、米ぬかや牡蠣殻などを発酵させた自家配合の飼料に加え、四季折々、旬の野菜も餌として与えている。

塚本さん:「農家さんのもとに配達に行くことがあるのですが、その際に、野菜の本来は捨ててしまう部分を餌として提供していただいています。」

"農"に従事するもの同士、「美味しいものを届けたい」「地域に貢献したい」という想いも同じ。地域の輪の中で生まれる相互扶助の循環である。

卵の味は、鶏たちが「口にするもの」で変化する。旬の食材を食べた鶏たちが生み出す"山もりたまご"には四季折々の風味が織り込まれ、季節ごとに移り変わる自然の恵みを感じることができる。



命を紡ぐ。

環境や飼料にこだわり丁寧に飼育する中でも、毎日やってくるという獣の存在は、警戒が欠かせない。

塚本さん:「去年の夏、生後2ヶ月くらいのひよこたちが一晩でやられてしまいました。その日の朝に鶏舎を見にきたとき、呆然としました。本当にやるせない気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。」

養鶏は、命を守り、つないでいく"導い"仕事。たくさんの命を預かるからこそ、喜びに満ちる瞬間だけでなく、数々のリスクとも向き合わなければならないと塚本さんは話す。



福祉に還元したい。

山もり養鶏場では、「農福連携」に力を入れており、卵の検品や商品の梱包などの仕事の一部を就労支援施設に委託している。こうした想いの背景には、前職で障害福祉に携わっていた塚本さん自身の経験がある。

塚本さん:「前職では障がい者の学童保育の先生をしており、障がいのある子供たちに関わっていました。現在、養鶏場として規模を拡大していく方針なので、飲食事業を展開していきたいと考えており、その中で、農福連携が実現できれば良いなと思っています。」

今後は福祉に特化した企業との協業や商品開発等のコラボレーションを予定していると話す。



妥協はしない。その信念をこの先も。

豊かな土地で丹精込めて育てられた"山もりたまご"は、「色がいい」「臭みがない」「これなら生で食べられる」といった声が多く寄せられている。

塚本さん:「特に、"山もりたまご"は臭みがないと好評で、『以前は苦手だった人でも食べられるようになった』といった声も多いです。」

塚本さんのおすすめの食べ方は、"シンプルな卵かけご飯"。生臭さがないため、何もかけずとも、卵本来の旨みが口いっぱいに広がり、そのままでも十分楽しめるとのこと。

どこか懐かしく、そして力強い"山もりたまご"は、うきはの美しい風景とともに「本物の美味しさ」を追求するために、これからも進化を続けていく。

文:emma. Inc.

写真:emma. Inc.(一部農園様提供)