「我が子に食べさせたい」無農薬米。地域で協力し合うサイクルをもっと。

糸島市二丈の先祖代々受け継がれた地で、『我が子に食べさせたいモノをお客様に』をコンセプトに、米・麦・大豆を生産する「百笑屋」。特に、化学肥料や農薬を使用しない「ミルキークイーン」は、別名『お子様専用米』と称するように安心安全、唯一無二の味。粘りが強く、噛めば噛むほどモチモチとした食感で美味しいと熱狂的なファンが多い。



一度味わうともう戻れない。

百笑屋のお客様は、長期にわたって買っていただける方が多いそう。「死ぬまで買う」と毎年その年1年分をまとめて購入するお客様もいるほど。また、業界からの評価も高く、群雄割拠の糸島「米づくり品評会」では、食味部門で最優秀賞受賞のお墨付きである。



無農薬米を"当たり前に"実現するために。

まずは栽培中の難しさ。稲の状態をいかに的確に察知できるかが肝となるが、株の拡がり方や葉の向きなどの「細かい表情」があり、この表情を見極める感覚を身につけるのに10年はかかると松崎さんは話す。

そして、収穫後の難しさがある。農薬の有無に関わらず、米は非常に繊細で、何もしないと保管時にカビが生えやすく、小さな虫が混入してしまうリスクもある。そのため、通常は燻蒸処理を行うことにより対策をしているところが多い。一方で、百笑屋ではこの燻蒸処理をすることなく、収穫後すぐに冷蔵庫で保管することにより、安心安全なお米の提供を実現している。保管した後は、それで終わりではなく、その後も赤子を見守るようなきめ細やかなケアが欠かせないという。

※燻蒸処理:虫の駆除のための薬剤散布



「地域で協力し合うサイクルをもっと」

百笑屋のお米の美味しさの秘密を伺った。一つ目は、化学肥料を使わないこと。もう一つは、堆肥に「菌を吹かせる」ための厳正な温度管理。特に一つ目については、畜産業者と提携し、堆肥をいただく代わりに、牛が寝たり座ったりするための敷き材として使うもみがらを提供しているそう。

松崎さん:「今後もこれだけではなく、地域で協力し合うサイクルをもっともっと回していきたいと思っています。」

近隣の農家さんが困っていたら、重機を貸し出したり、排水設備を整備したりと、率先して手伝っているとのこと。お互い向上してより良くという、まさに地域の農家の"鑑"となる姿がそこにあった。



初めて現場を任された、小学5年生の夏。

農家の家庭に生まれ育った松崎さん。百笑屋の社長であると同時に親になったいま、「気がつけば農業への情熱が芽生えていた」と、幼少期を振り返る。

松崎さん:「小学5年生の時、父親が『ここの仕事を任せる』と言い残し、出かけていったことがありました。トラクターに初めて乗り、"エンジンのついた乗り物"というだけでとてもわくわくした記憶があります。父に『おらん間にようやったな』と言わせたい!と思い、農作業を頑張ったことがとてもいい経験になり、今振り返るとこの時が『農業を一生の仕事にしたい』と決心したタイミングだったと思います。」

そして同時に、「両親が子供の健康を第一に願って、日々働いていたのをいまになって実感します」とも話す。家族やお客様の健康を気遣う"百笑屋のDNA"を脈々と受け継いでいるのが、百笑屋の現代表である。



目指すのは、「地域相互扶助の農業」の確立

百笑屋の今後の目標は、「お互い向上してより良くという"地域相互扶助の農業"を伝え、ひろげていくこと」。いま耕している農地も、「すべて恩送りて回ってきていて、たまたま自分たちが管理させていただいているだけ。次世代に良い状態でバトンパスするのが当たり前。」と松崎さんは語る。

松崎さん:「うちは『遠くの親戚より、近くの他人』という考え方を持っていますが、多くの農家でこのような考え方を持つようになると、農業も業界として変わってくるんじゃないかと。そこに百笑屋があってよかったね、と地域の方々に言っていただけるような農園でありたいですね。」



伝統と最新技術の融合。「100%の状態で後世につなぐ」

松崎さん:「うちの米の作り方を他の農家さんにのれん分けしたら、どの農家さんも米がつくれて売れるようになるぐらいまでに到達したいです。そこまで至るには、まだまだ技術を高める必要があります。」

代々受け継がれてきた土地と農法を継承しながらも、現代の最先端技術の流れも汲み入れていく意向の松崎さん。現在、IoTを活用した農地・農機具の管理や、耕作放棄地の課題の解決も計画中とのこと。

今後の農業の在り方を模索し、挑戦を続ける松崎さん。農業のいかなる課題も、"地域一体となって"、みんなで乗り越えていく。


文:田崎 琴乃

写真:emma. Inc.(一部農園様ご提供)