農業を本当の意味で”科学”する。 野菜も、働くスタッフも、「個性を惹き出したい」。

「松の実ファーム」は、福岡市西区や糸島市などで全10ヶ所の圃場を有する有機JAS認定農園。有機人参や有機ほうれん草など毎日の食卓を彩る定番野菜から、一般には中々出会えない西洋野菜や伝統野菜まで、年間50品目以上を四季折々に栽培する。



多品目栽培だからこそ、一つひとつの野菜の個性を理解する。

多品目栽培の農家さんの中でもさらに多品目で栽培している松の実ファーム。それぞれの野菜に最適な水・気温・肥料を調整し、手間隙かけて美味しさを惹き出す。その並々ならぬ探究心と培われた経験値から、松尾さんのもとで学び、独立した新規就農者も多い。

松尾さん:「どんな野菜でも、野菜を作る基本的な方針は2種類あって、その作物が育つのに最適な条件(気温、水、肥料分など)で作る方法【Rest】、もう一つはあえて条件の一つを育ちにくい厳しい条件にして作物に負荷【Stress】をかける方法。この方法を使い分けることで、同じ野菜でも味や食味が全然違ってきます。お客様によっても感じ方が違うので、一概にどちらが良いというわけではないですが、試行錯誤しながら、お客様が食べて喜んでいただけるものを日々追求しています。」



農業を本当の意味で「科学」したい。

松の実ファームの土壌づくりは、穀物を発酵させてつくる"ぼかし肥料"を使用する。厳しい基準をクリアし、有機JAS認証を得ていながらも、有機JAS基準で使用が認められている農薬さえも使用していないそうだ。そこには、お客様の健康のためは勿論のこと、何万年も続いてきた自然界の"循環"を尊重し、その仕組みのなかで作物をつくっていきたいという想いがあった。

松尾さん:「自然科学というのは、自然現象をよく理解し、人間の生活が豊かになるように活用することを目的としていますが、農業(農学)もその自然科学の一分野です。例えば、人類のはじまりに立ち還ると、人は大昔に森の木を燃やすことによって暖をとれることを発見しました。その行為は、その時は"科学的"な行為であったと言えるかもしれません。ただある時から、多くの人がそれを真似し、森の木を切るスピードが、森が再生するスピードを超え始めた頃から、木を燃やして暖をとるという行為は、いつしか本当の意味での"科学"でなくなったということだと思うのです。そうなったいま、別の方法を考える必要がある訳で、私が進めている有機農業は、そういった本当の意味で"科学的"であり続けたいと常に思っています。」



個性を発揮しながら気持ちよく働く"村"づくり。

松の実ファームが目指すのは、働く側が気持ちよく農業に携わる場所でありつつ、お客様との交流拠点としての役割も果たす、"村"のような場所づくり。

松尾さん:「農業は、畑仕事だけでなく、袋詰めや販売など様々な工程があり、年齢や性別問わず、それぞれの個性や得意を活かして働くことができるのが魅力の一つですね。やりたいことは沢山ありますが、一人では出来ないので、各人がプロジェクトを持って、取り組む事によって、お互いに高め合えるファームを目指しています。」

農業を広く捉え、働く人びとの個性を惹き出し、成長を促す。そして、人びとが本当の意味で自然を活用し、循環していく社会のために、松尾さんの挑戦は続く。

写真:農園様提供

文:田崎 琴乃