”完熟”の刹那を逃さない。人、虫、トマト、すべてに優しい農業を。

福岡市と糸島市の境目にある「Tomato Farm 西農園」は、一般的な赤いトマトの他、紫・オレンジ・黄・緑と色彩豊かなカラフルトマトを栽培する。栽培する品種の数は何と10以上。キラキラと宝石のような輝きを放つ「見て嬉しいもの」、食べると果物にも匹敵する甘さが口いっぱいに広がる「食べて嬉しいもの」など、その個性は様々。色彩や味の違いを楽しむことができるギフトも人気だ。



一粒一粒を大切に、その日のうちにお客様の元へ。

毎朝まだ空が薄暗い時間帯から、広大なハウスの中を、一粒一粒、丁寧に、トマトの成長の変化を確認しているというTomato Farm 西農園代表の西さん。カラフルトマトは品種によって、色・食感・味・栄養素がそれぞれ異なるため、品種ごとの特性を理解し、それを最大限に惹き出すことが美味しさの秘訣であるという。完熟の状態で収穫し、なるべくその日のうちにお客様のもとへ届けられるようにと、出荷の仕事もきびきびと手早い。



人も虫もトマトも、すべてに優しい農業を。

一般的に農薬無しでの栽培が困難と言われるトマト。西農園では農薬を極力使用しない減農薬での栽培を行っている。農業を始めて間もない頃、農薬を使用した際に、西さん自身が具合が悪くなってしまったことがきっかけだったそう。

西さん:「人も虫もトマトも、すべてにやさしい農業。みんなが幸せになる農業を続けていきたいです。だから農薬は使わず、虫も殺すのではなく、"避けてもらう"。無理なく育て、自然との間に立つのが農家のあるべき姿だと思うんです。」



ゆえに、西農園のトマトは小さなお子様も安心して食べることができる。実際に、実が熟して割れてしまったトマトは、冷凍した後、一部はジャムやジュースにして販売する他、西さん一家の子どもたちのおやつにもなっているという。

西さん:「甘くて美味しいので、子供たちも喜んでパクパク食べます。我が家ではコンビニのアイスよりも西農園の『トマトアイス』の方が人気なんです(笑)安心安全なので、親としては嬉しいことです。」



地道な努力と周囲の支え。

西さんは農業を始める前、糸島のとある農家のトマトの仕入れと販売を手伝っていた。その農家のつくるトマトが、これまで食べたことのないほど美味しく感動したそう。その後、その農家が辞めてしまうことになった際に「自分で始めてみたら?」と勧められたのをきっかけに一念発起。「Tomato Farm 西農園」創業を決心した瞬間だった。

農業の知識については、近隣の農業普及センターやベテラン農家さんへ聞き、経営については本やネットで独学で学んだ。それでも失敗の連続で「本当に苦しかった」と振り返る。

西さん:「初年度は、虫が湧いて収量が少なく、収入はゼロでした。」

それでも「創業時から寄り添って支えてくれている」という奥さんをはじめ、周囲の先輩農家さん、購入してくださるお客様の支えがあって、いまの西農園がある、と西さんは語る。

西さん:「多額の設備投資をしてのスタートだったので、尻に火がついたのもありました。失敗して、聞いて、学んでを繰り返し、身をもって学べたことが現在活かせているので、逆に独学で良かったと思っています。今後は沢山助けてもらった恩返しがしたいですね。学んてきたことをいつか自分の中で体系化して、後の世代に伝えていきたいです。」



保育と介護がつながる場所。街中の人が集まる"村"をつくりたい。

西農園の今後の目標は、農業を中心として、祖父母世代、自分たち、子世代の3世代が集い、支え合うことができる場をつくること。

それは、街の人が集まってこられる食堂のような場所であり、保育と介護福祉が統合された場所であり、働く場所でもあり、遊び場でもある。そんな"村"をつくるのが夢なんです、と語る。

西さん:「子ども世代も、幼い頃から遊び感覚で農業を身近に感じてもらい、成長した時に、農業を職業の1つとして考えてもらえれば良いなと思っています。」

文:田崎 琴乃

写真:emma. Inc.